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「私は…なんで妹なの…」
今にも消えてしまいそうな声が、聞こえた。会社を出て、急いで駅へ向かう。
「…っく、っ」
すすり泣きが聞こえる。
駅に着いた時、七海はコーヒー屋ではなく改札の少し先のベンチに座っていた。
通話状態を止め、携帯を閉じて七海にゆっくり近付く。
電話が切れたことで、七海は電話を見て焦っている。
その顔は、軽い泣き顔。
幼き日の…再会の日とは違った泣き顔。
「ふわ…っ!」
──ぎゅっ…
座っていた七海の手を強引に引き、抱き締める。
幸い、周りには誰もいない。
「兄、ちゃん…?」
「…帰るぞ」
指を絡め、手を繋ぎ、
俺達はホームに向かう。
たまに、ある。
こういう事で悩むのは。
毎回答えは出ない。
だが、これでいい、そんな気もする。
「兄ちゃん待ってっ…」
少し早く歩きすぎたようだ。
少し待ち、手を繋いでいない方の手で七海の頭をやさしく撫でた。
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