1人が本棚に入れています
本棚に追加
「にしても、雨なかなか止まねーな…」
空っぽにしてきた軽いカバンを横にして頭の上に乗せ、傘代わりにしながら、俺は帰り道の通学路を歩いていた。
もともと、俺の家は学校に近いので、自転車を使う理由も無く、歩いて登下校をしている。
家が近いと言っても、雨の日は制服のズボンはビショビショ。
雪なんかが降った冬の日は寒さで大変だったし、滑って転ぶ回数も並ではなかった。
「いつ止むんだろーなー…、この雨」
雨は、学校に居た時よりも少し強くなり、俺の制服はカバンで隠れていない肩の所が雨に濡れてしまっていた。
所々にある大小様々な水たまりをよけながら、近くの公園の前までたどり着いた時。
雨降る公園から歌が聴こえて来た。
雨ヨ降レ降レ 涙ノヨウニ
私ノ髪ヲ濡ラシテ 落チテ
祈リヲ願ヲ込メナガラ
私ハ歌ウ 乾イタ唇デ
その歌声は、小鳥の囀りのような少女の声だった。
儚くて、消えてしまいそうな声。
.
最初のコメントを投稿しよう!