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時は流れ……
「何で好きって言ってくれないの?」
「態度に出してるじゃん」
俺達はすれ違い始めていた。
「言ってくれなきゃ…分かんないよ…」
「恥ずかしっ!」
行動で示せば十分なんじゃ…?
「でも言ってほしいもんなの!」
「………」
暫くの沈黙が訪れる。
「ちょっと…距離おかない?」
「え?」
俺は一つの結論にたどり着いた。近くに居過ぎたんだ。だから、俺の行動が当たり前になって、愛されてる実感がなくなったんだ…だから…。
「距離を置こう」
「何…で…?」
俺は何も答えずに黙って立ち去った。
『愛』って何だ?行動で示すだけじゃ…ダメなのか?それとも、女の子がそうなのかな?『愛してる』とか『好きだよ』とか、そういう言葉を言ってもらえないと不安で…。不安になるから、確かめたくて…。
数週間後
あれから一体…何日経ったんだろう?一日が異常に長い気がする。それほど長く感じてるのに…彼女のことを考えない日はなかった。自分から離れておきながら……俺って我が儘だな…。
「ねえ」
昼休みに、俺は彼女に声をかけた。
「今日、終わったら…良いかな?」
「…うん」
やっぱり俺は彼女が好きだ。だから言おう…『愛してる』も『好きだよ』も。一緒に暮らそう。そしたら、何度だって言うから…。
終了後
「やっぱ俺…無理みたい」
「え?」
彼女は目を丸くした。
「君がいないと…ずっと…」
俺は彼女の目が見れなかった。だから気が付かなかった。彼女が悲しい目をしていたのを。
「一緒に暮らそう?」
俺は、ここで初めてそれに気付いた。
「ゴメン……親の薦めで、縁談があったの……」
「縁…談…?」
俺は、うまく声が出せなかった。
「親同士が勝手に取り付けたから…もう、断れないし…その人、凄く良い人だったから…一生…愛してくれる…言葉で…示してくれるって…約束したの」
「じゃあもう…」
彼女は黙って頷いた。
「親同士が勝手に縁談を取り付けるって…江戸時代か漫画でしかありえないと思ってた…」
俺は独り言の様に言った。
「ゴメン……」
俺は彼女を抱きしめた。
やっと見つけたのに…。
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