However

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孤独を背負う人は、この世にたくさんいて……俺もその一人だった。そしてその誰もが、自分の寄り掛かれる場所を探していて…俺は見つけたんだ…君を。 寄り掛かって良い――それは、心の平安をもたらしてくれる。そして何より、その人のために一生懸命になれる。感謝の気持ちがあるから…。 「もっと…もっと早く出会ってればね…」 「え?」 彼女は泣き泣き言った。 「もっと早くあなたと会えたら…もっと早く元に戻れて、そしたら…この人が私の彼氏で…この人と一緒に暮らそうと思ってるからって…言えたのに…遅すぎたんだよ…もっとずっと早く会えてたら…そんな話が出る前に私達…」 「ゴメン…俺ももう少し、君の気持ちを大切にしてあげられてたら…」 大事な人なのに…傷付けた。自分の勇気の無さに負けて。だから、今こそ言うべきかもしれない。 「…d…」 『誰よりも愛してる』 俺は言いかけて、その言葉を飲み込んだ。この気持ちを…永遠と呼べたら…。そしたら俺は…。だから言ってはいけない…言ったら…困らせる。たぶん、俺はまた傷付けるだけ。ああ…こういうのが本当の『愛しさ』とか『優しさ』ってことなのかな…?そんな訳ないか…。 「……?」 「いや、何でもない」 彼女はおそらく分かっている。俺が何を言おうとしたのかを。それでもわざわざ聞いてきたのは、言ってほしかったのかもしれない。言ったら、きっと俺達は一緒になった。でもそれは、彼女の本当の幸せじゃない。俺は勝手にそう解釈していた。 「とりあえず、出よう」 俺達は外に出た。 「じゃ…お幸せに」 「そっちもね」 初夏の爽やかな風に吹かれながら、俺達は互いに背を向けた。 恋した日の胸騒ぎを、何気ない週末を、幼さの残るその声を、気の強い眼差しを、あなたを彩る全てを抱きしめて…俺はゆっくりと歩き出した。 ~However GLAY~
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