一輪の花

4/7
前へ
/32ページ
次へ
それからしばらくして、阿部さんはクラスに馴染み始め、友達もできていた。私の怪我も良くなり、彼女と私はあまり話さなくなっていた。そんなある日だ。クラスに行くと、皆が一カ所に集まっていた。何かあったのだろうか?私はその人だかりにいた人に話し掛けた。 「何か…あったの?」 「窓ガラスが割られたみたい」 その人が答えた。 「ふーん…」 私はたいして興味も無かったので、すぐに席に戻った。 「ほら、席に就けー」 と、担任の先生の声。この様子だと、先生はもう知っているのだろう。 「そこの窓ガラスが割られたのは見ての通りだが、誰がやったかは全く分かっていない」 分かってたら、こんな騒ぎにはならないだろうな。 「何か情報があれば、何でも良いから、先生に報告する様に」 先生がそう言った時だ。 「先生…」 窓際の席の女の子が手を挙げた。 「どうした?」 「昨日、人が教室に入っていくの見た」 そいつ犯人だろ…。 「誰かは分かるか?」 「…花音ちゃんに…似てた様な…」 はぁ⁉ 皆が一斉に私を見る。 「だからさっき、あんなに興味なさそうだったの?」 私が話し掛けた女の子が言った。 「私、知らないんだけど」 私は不機嫌に答えた。 「まあ、また何かあったら報告する様に」 先生がそう言って、ホームルームが終わった。そしてどこからだろうか?私は否定したにも関わらず、私が犯人だと学年中に広まっていた。理由は、 『自分に気付いて欲しかったから』 ということになっている。理由だけ否定しがたい。誰かに自分の存在を気付いてほしい…そんな気持ちはどこかにあった。 そして帰りのホームルーム。 「お前ら、何で証拠も無い噂を流すんだ?何もしていないのに、自分が犯人にされたら嫌だろ?」 そう言う先生だって、私を疑ってるくせに……。 『早く名乗り出ろ』 目がそう言っている。 「あの、人を見たのは何時頃?」 阿部さんが、報告をした女の子に聞いた。 「部活終わりの時間だったから……19:00くらいかな?」 「その時間、お家の方に入っていく花音ちゃんを見た」 阿部さんがそう言うと、クラスの全員がざわめいた。確かにその時間、ちょうど家に着く頃だ。 「本当か?」 先生が聞いた。 「私、方向一緒だから…それに…」 「それに?」 先生が先を促す。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加