1人が本棚に入れています
本棚に追加
それからしばらくして、阿部さんはクラスに馴染み始め、友達もできていた。私の怪我も良くなり、彼女と私はあまり話さなくなっていた。そんなある日だ。クラスに行くと、皆が一カ所に集まっていた。何かあったのだろうか?私はその人だかりにいた人に話し掛けた。
「何か…あったの?」
「窓ガラスが割られたみたい」
その人が答えた。
「ふーん…」
私はたいして興味も無かったので、すぐに席に戻った。
「ほら、席に就けー」
と、担任の先生の声。この様子だと、先生はもう知っているのだろう。
「そこの窓ガラスが割られたのは見ての通りだが、誰がやったかは全く分かっていない」
分かってたら、こんな騒ぎにはならないだろうな。
「何か情報があれば、何でも良いから、先生に報告する様に」
先生がそう言った時だ。
「先生…」
窓際の席の女の子が手を挙げた。
「どうした?」
「昨日、人が教室に入っていくの見た」
そいつ犯人だろ…。
「誰かは分かるか?」
「…花音ちゃんに…似てた様な…」
はぁ⁉
皆が一斉に私を見る。
「だからさっき、あんなに興味なさそうだったの?」
私が話し掛けた女の子が言った。
「私、知らないんだけど」
私は不機嫌に答えた。
「まあ、また何かあったら報告する様に」
先生がそう言って、ホームルームが終わった。そしてどこからだろうか?私は否定したにも関わらず、私が犯人だと学年中に広まっていた。理由は、
『自分に気付いて欲しかったから』
ということになっている。理由だけ否定しがたい。誰かに自分の存在を気付いてほしい…そんな気持ちはどこかにあった。
そして帰りのホームルーム。
「お前ら、何で証拠も無い噂を流すんだ?何もしていないのに、自分が犯人にされたら嫌だろ?」
そう言う先生だって、私を疑ってるくせに……。
『早く名乗り出ろ』
目がそう言っている。
「あの、人を見たのは何時頃?」
阿部さんが、報告をした女の子に聞いた。
「部活終わりの時間だったから……19:00くらいかな?」
「その時間、お家の方に入っていく花音ちゃんを見た」
阿部さんがそう言うと、クラスの全員がざわめいた。確かにその時間、ちょうど家に着く頃だ。
「本当か?」
先生が聞いた。
「私、方向一緒だから…それに…」
「それに?」
先生が先を促す。
最初のコメントを投稿しよう!