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「お母さん…!」
真里亜ちゃんが笑顔で言った。
「やっぱり…」
彼女のお母さんが、ゆっくりと目を開けたのだ。
「声が聞こえた様な気がしたんだ…」
私は独り言の様に言った。
「あー…良かった…」
真里亜ちゃんはそう言って泣き出した。
「泣くなよ」
私は頭を撫でる。
「だってぇ…」
彼女は余計に泣いてしまった。
「ほら、大丈夫だから」
私そう言って彼女を抱きしめて、自分の肩で飽きるまで泣かせておくことにした。身長が165㎝と、女にしては比較的長身な私の肩は、145㎝の小さな彼女にピッタリだった。
「…うっ…ゴメン…肩、濡らしちゃった」
「ん?あぁ、気にしないの」
そう言って私は笑ってみせた。
「良かったね、お母さんが目を覚まして」
前に私が病院で目を覚ました時なんか、家族は誰もいなかったもんな…。真里亜ちゃんには、大事な家族がいる。友達もいる。私がいなくても、一人にならない。私はふとそう思った。やっぱり私は、いらないや…。こういうのを見ると、つくづくそう思う。うん、消えよう…。私は自分の中で納得しながら思った。
「あ、じゃあ…私はこれで」
「また明日ね」
そう言う彼女に私は何も答えず、ただ少し笑って、踵を返した。それが彼女に、何かを感じさせたのだろうか?私が病室を出て2、3歩行くと、彼女が追ってきた。
「花音ちゃん…?」
私は振り返り、少し笑って手を振ると、何も言わずに歩き出した。
「待って……どこ行くの?」
私は一瞬立ち止まったけど、再び歩き出した。
「待って…行かないで…」
――行かないで
無視するの?
私は足を止めた。
「私がいなくても、真里亜ちゃんは一人にならないから…大丈夫だよ…」
そう言って再び歩き出す。
「なるよ…」
私はまた立ち止まった。
「皆に話し掛けるの…凄く勇気がいるの」
そんな風には見えないが…。
「元々、仲の良い人達が集まって、グループになって…そこに入っていくの、凄く勇気がいるの」
……その気持ちは、よく分かる。
「花音ちゃんは…そういうの、気にしないタイプみたいだから…グループとか…」
確かに気にしない。
「だから、疎外感が無くて、本当に仲良くなれるなら…花音ちゃんしかいないの…お母さんだって、ずっとあの調子だから…いついなくなっちゃっても、おかしくないの…」
そんな風に、考えたこともなかった。
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