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ただ単に縄が脆かっただけだな、うん。
そうやって自問自答で納得し、小屋を出るため扉に向かう。
扉の前まで行き俺はまた「えぇいままよ!」と叫びながら扉を蹴り飛ばしてみた。
いや、なんかむしゃくしゃしてたから、つい。
「てか何?なんでこんな脆い訳?これならすぐに脱出出来たじゃん」
考えても整理がつかない考え事を考えてた時間が無駄だったじゃないか。
……ややこしいな。
「さて、外では何をやってるのかなっと」
そう言いながら俺は外を見る。
「ムッ、暗い。ってことは今は夜か」
小屋の中には蝋燭の火だけだったから夜の暗さにすぐ目は慣れた。
「森、か?」
暗さに慣れた目で周りを見渡すと木々しか目に入らない。
「森ってことは携帯も圏外だろうし…………ってあれ?携帯なくね?」
携帯だけではなく他に何も持っていない。
今、桜輝は服しか身につけていない状態だった。
ちなみに服装はお気に入りの私服だった。
「こんな何もない状態で夜の森に一人とかマジ勘弁だわ」
夜の森は不気味な雰囲気を出すには充分過ぎるぐらいだ。
てかなんでこんな状況なんだ?
目が覚めたら小屋の中で椅子に縛りつけられてて脱出してみたら森の中。
しかも何も持ってない。
「謎は深まるばかりであった。って言ってみたりしてみたり」
俺のそんな戯言はすぐ夜の静けさと木々のざわめきに消された。
「こんな森の中野宿かぁ?マジ勘弁してくれって」
まずは一旦小屋に戻るか。
と思い振り返る。
だが小屋があった場所にはもう小屋はなかった。
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