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「こんな所で何やってんの?泣き虫マナちゃんっ」
――そんなまさか、だって、先輩は忙しいはずなのに……
ここに、来るはずないのに……
「先輩……なんで、ここ……?」
「愛美の居る場所くらい、すぐわかるよ」
先輩はそう言って私に近寄ってきた。
私のすぐ目の前まで来ると、いつもみたいに優しく笑いながら私の頭を撫でてくれた。
「……受験勉強どうですか?」
「んー?超いい感じ!俺、こう見えてもできる男だから」
「そっか……。」
先輩は話してる時も、ずっと頭を撫で続けてくれた。
優しく、優しく、泣いてる子供を慰めるみたいに。
――ふと、その手が止まった。
どうしたのかと、私が先輩の顔を見上げようとすると、先輩の方が先に私の顔を覗き込んできた。
「なんか我慢してるな?」
「えっ……」
「言いたい事言ってみ?」
――先輩には、全部バレてしまうんだ。ここに来たことも、来た訳も、私の不安も。
もうこの際、先輩に全部話しちゃおう。
私は意を決して口を開いた。
「私、先輩に会えないって言われてからずっと寂しかった。メールも電話もしたかった。でも先輩は受験っていう大事な時だから……邪魔しちゃいけないって思って我慢しました。でも、1週間経って……1週間しか経ってないのに、我慢できなくなっちゃって、気付いたらここに来てました。」
「……うん」
「ここに来て、やっぱり寂しいって……先輩に会いたいって思いました。毎日会わなきゃ不安で仕方なくて……。わがままだって事わかってます、しょうがないって事もわかってます。でも、やっぱり私……っ!」
そこまで言ったところで、私の目から再び涙が零れた。
それを合図にしたかのように、先輩が私を優しく抱き寄せた。
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