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「エルーー!! いい加減にしないと怒るよ!!」
先ほどから、ずっとエルを急かしているのはベルニカ・ワルキューレという名のエルの幼馴染みの16歳の少女だ。
紅い髪を腰まで伸ばしてる彼女は、彼女の好奇心の強さをそのまま表しているような丸い瞳をしている。
そして、彼女の背丈と同じぐらいの長さをした水玉模様の傘を背中に挿して、端から見たらとても清楚な印象のとても可愛らしい女の子だ。
しかし、そんな彼女にも欠点ともいえる、最大の癖がある………。
「もう!! 何回、早くしてって言わせれば気がすむのよーーー!!!!」
痺れを切らしたベルニカは、近くに落ちている握り拳程の石を掴み、エルに向かって投げつけた。
ベルニカが投げた石は、綺麗な放物線を描いて一直線にエルに向かっていく。
そして―――
「痛ぇぇぇ!!」
ゴツン!! という大きくて鈍い音と共に石はエルに命中した。
そう、これが彼女の最大の欠点である。
彼女は清楚な見た目とは裏腹に忍耐力が弱く、口よりも先に手が出てしまうのだ。
エルは毎度、彼女のこの癖に悩まされ続けている。
「おい痛ぇだろ、ベル!!」
ベルというのはエルがベルニカを呼ぶときに使う表現である。
「エルが悪いんでしょ!! どれだけ待たせるつもりなの!?」
「ごめん、ごめん、色々準備があってさ。……それより、本当にここでいいのか??」
「うん、間違いないよ。だって、ほらあれ」
ベルニカはそう言うと、何かを指差した。
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