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「ダメだ……。全然開かないや」
エルは数分、南京錠と格闘していたが遂に観念して手を離した。
「なぁベル、どうする?? これ……」
エルは手についた南京錠の錆を払い落としながらベルニカに尋ねた。
「そんなの簡単よ」
ベルニカはそう言うと、エルの前を横切って石の扉の前に立った。
そして、服のポケットに手を突っ込み何か黒ずんだ鉄の塊を取り出し、エルに自慢気に見せる。
「何だそれ……??」
エルはベルニカの手の中に収まっている鉄の塊を怪しげにじっくり眺めた。
「これはこの祠を開ける鍵よ」
「鍵!? 何でベルがそんなもの持って……」
エルの発言を遮る形で、ベルニカは呆れた表情を浮かべて呟く。
「エルはいつも無計画だから、こうなると思ってパパの書斎からこっそり借りてきたのよ」
ベルニカの父親は、エル達の故郷`ミール村'の村長なのだ。
この封印の祠は、以前は鍵など掛かっておらず、村人なら誰でも出入り出来るものだった。
しかし、ベルニカの父親が村長に就任した時に村の掟と定め、入り口に鍵を掛けてしまったのだ。
その為、鍵の管理は村長であるベルニカの父親が勤めている。
だから、ベルニカはこっそりと持ち出すことが出来たのだ。
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