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「エルーー!! 早くぅーー!!」
「あぁ………」
エルは心なしか弱々しい声で返事をすると、ベルニカを追って封印の祠へと足を踏み入れて行った。
祠の中は一本道になっており、祠全部が何か言葉では言い表せないとても強く不思議な感覚で包まれている。
あえて言葉で表すなら、目の前に小さな太陽があって、それから直接熱を受けているような圧倒的な感覚。
エルもベルニカもそれを肌で感じ取っていた。
「なんだろうねこの感覚………。なんか変な感じがする……」
ベルニカは不思議な感覚、その正体を確かめようと辺りをキョロキョロと見渡した。
祠の中を見渡してみると、壁や床には大きな爪痕が残っていたり、柱が折れていたりと、すごく荒れていることが確認出来る。
「エルは、あたしの前を歩いてよ」
二人は奥へと続く怪しげな一本道をゆっくりと歩き始めた時、ベルニカはエルに言った。
「分かったよ」
エルはベルニカの申し出を受け入れて彼女の前を歩き始めた。
ベルニカもエルに合わせて、彼の服の袖を掴みながら歩きだす。
これはいつもの光景である。普段、気の強いベルニカも意外にも怖がりで、こういう時だけは見た目通り清楚で可愛らしい女の子になってしまうのだ。
「ベル……、歩きづらいから、あんまりくっつくなよ」
「だって、怖いんだもん……」
普段のベルニカからは、想像もつかない程力の抜けた声の彼女を連れながら、二人は奥へ進んでいった。
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