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朝、目が覚めたら宙吊りにされていた。
「なして?」
「あ、やっと起きたぁ」
丁度私から死角になる位置から聞き慣れた声が聞こえた。
「お姉ちゃん、どんなに揺すっても起きないんだもん。退屈だったから縛ちゃった。」
良い笑顔でそんなことを言ってきた我が妹、葉子。
「な~んでこんなことするのかな~?よ・う・こ?」
今までで一番怖い笑顔を作り、葉子に微笑んだ。
「何でって、さっき言ったじゃん。退屈だったからだって」
「それ、だけじゃないでしょ!?」
その言葉に呆れた私は語気を強くしてそう言い放つと、彼女は黙ってしまった。
「うふふ…」
黙った彼女は困ったような、呆れたような、それでいて、羨望に満ちた視線を微笑みと共に私に向け、口を開いた。
「…それはね…」
葉子はさっきまでの笑みから一転。
氷った水面のような無表情に変わった。
私はそれに一瞬恐怖を覚え、下腹部が冷やりとした感覚に襲われた。
いつもと違う一面に言葉が出ない。
ゴクリと口の中に溜まった唾液を呑む音だけが部屋中に響き渡った。
その音を合図に葉子は再び口を開いた。
「…姉様にも、こないだ私が味わった屈辱と恥辱と汚辱の果てに生まれる快楽を、快楽を教えてあげたくって」
そう言った葉子の表情は氷のような無表情から、妖艶で蠱惑的でそれでいて悪戯をする時の子供みたいな表情に変わった。
「な!?何よそれ!ほどきなさい!解放しなさ──むぐっ!?」
言葉が終わるか終わらないかの辺りで異物が口を塞いでいた。
見ると私の口を葉子の唇が塞いでいた。
「──ぷはっ。ちょっとだけ大人しくしててね」
ニコリと、微笑み赤子をあやすような優しい口調で静かに私を諭してくる。
不覚にも胸がドキリと高鳴った。
ふと意識が遠退いていく。
キスされた時に睡眠薬か何かを入れられたみたいだ。
「快──を───に─」
葉子が何を言っているのか聞き取れなくなってきた。そしてそのまま、意識が完全に途切れた。
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──
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