第一章

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クンクン!! 少年は鼻を鳴らしながら 土手を歩いている 目を閉じ 手には白い杖を持っている 「この匂いは……椿?」 「お~正解!鳴海は凄いね~」 少年の隣を歩く老婆は 嬉しそうに目を細める 鳴海と呼ばれた少年 幼少頃の事故で視力を 失っていた 「だってお婆ちゃんの 好きな花だもん! 覚えちゃうよ」 その屈託の無い笑顔に 老婆の顔も自然と綻ぶ 「さっ鳴海、遅刻するよ 早く行こう」 東京を離れ九州は長崎県 の五島列島に越して来て 今日が初登校 期待に胸を膨らませ 鳴海は元気に返事をした
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