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「どうぞ。」
「わざわざすみません。」
メイドの淹れてきた紅茶を受け取る。
上品な紅茶の香りが心を和ます。
客間の静かな雰囲気を高め、
この館と彼女の気品がどれ程の物か、感じることができた。
「では…お話を伺いましょう。
私が十六夜咲夜です。」
薄々そうだと思っていた聖は、
大して驚くことなく話し始めた。
咲夜は黙って聞いていた。
肯定も否定もせず、表情もそのまま、考え事をしている風でもない。
「…以上です。」
聖がそう言っても、黙ったまま。
その無言の圧力が解かれるのに、少しの時間がかかった。
「その考えを受け入れる事は出来ないと思います。」
それは拒否の言葉。
咲夜は暗くなる聖に続けた。
「残念ながら私は妖怪に興味があるわけではありません。
私がここにいるのは、
ここが私の居場所だからですわ。
紅魔館の皆様に支えられて今の私がいる。
妖怪だから、魔女だから、悪魔だから、共に居るのではないのですから。
正直他の人間や妖怪には
あまり興味はありません。」
種族が何でも関係ない。
ここまでならよかったが、
だからといって妖怪なら何でも、
というわけでもなく、
自分の考えを広める事は出来ないだろう。
今回も、大した収穫にはならなかった。
「はぁ…なかなかうまくいかないものですね…」
「おや、どうだったのかな?
その顔だとうまくいっていないのだろうな。」
帰宅して溜め息をついていると、
ナズーリンがそれを聞き付けて
よってきた。
「ええ。ナズーリンの宝探しのようには簡単にいきません」
「…白蓮様、宝探しというのは、
地道に手がかり一つ一つを使って探し出し、やっと見つけたものでさえハズレだった、何て事はよくある話だ。
でも、それが無駄だったなんて、
私は一度も思ったことはないよ。
だから白蓮様もめげずに頑張ってくれ。」
「ナズーリン…」
そうだ、焦る必要はない。
はなから簡単にいくなんて思ってなどいない事。
ならば成果が少なくたって、
構いやしない。
失敗したらまた探せばいい。
何度でもやり続ければいい。
失敗なくして成功はないのなら、
成功するまで何度だって失敗すればいい。
それが成功に繋がるのなら。
「ありがとうございました、
ナズーリン。」
「ん?ああ、どういたしまして」
さあ明日も思い切り失敗しよう。
光に進むために。
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