完全で瀟洒で総受けで

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「させないわ!」 その時、声が響いて咲夜がスキマに落ちた。 「キャーッ!!」 「なっ!?」 咲夜にとっては本日二度目。 紫はゆっくりと立ち上がった。 「咲夜をどこへやった!」 「ふふふ、私の家に送ったわ。 最初からこうするために、 藍にもあんな芝居をやらせたのよ」 その割には藍がけっこう本音っぽかったのは気のせいだろうか。 「今頃あの娘は藍に拘束されている筈。あとは邪魔されないように、あなた達を倒して帰るだけよ!」 「果たして、そううまくいくかしら?」 「私、強いわよ?」 「いや、家の方。」 「私を拘束するんじゃなかったの?」 「だから今しているだろう。 家事を手伝わせて動きを封じているんだ。」 「………」 咲夜は藍に服を借りて一緒に料理していた。 紫は知らないことだが、 この二人は仲が良いのだ。 勿論レミリアはその事を知っている。 「言うこと聞かなくて良いの?」 「いいよ、別に。 妖怪として尊敬はしてるけど、 恩も特にはないし命令聞かなきゃいけないわけでもないし、今回は酷いと思うからな」 「あら、冷たい」 くすくすと笑う咲夜。 藍の忠誠心は意外に薄い。 だからと言っても、彼女は主とは別の絆がある。 余計な心配はいらなかった。 まあ、無ければ無いで面白そう、 とは咲夜は口が裂けても言うまいと思った。 「藍さま、廊下のおそうじ終わりました!」 「そうか、ありがとう橙。 助かるよ」 藍が頭を撫でてやると、 橙は心地よさそうに目を細めて 藍にあまえる。 「ふにゃぁぁあ」 「はは、橙。顔が緩んでるぞ」 「だって、藍さまに撫でられてるからですっ」 甘え上手だな、と横目で見ながら大根の皮を剥く咲夜だった。 お嬢様も時々甘えてくる様な仕草をしてくるが、 もしああだったらどうだろうか。 あんまり素直じゃないしなぁ、 その時って。 ぼんやりしつつも手は休めない。 窓の外で鳥が歌い始めた。
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