50人が本棚に入れています
本棚に追加
「させないわ!」
その時、声が響いて咲夜がスキマに落ちた。
「キャーッ!!」
「なっ!?」
咲夜にとっては本日二度目。
紫はゆっくりと立ち上がった。
「咲夜をどこへやった!」
「ふふふ、私の家に送ったわ。
最初からこうするために、
藍にもあんな芝居をやらせたのよ」
その割には藍がけっこう本音っぽかったのは気のせいだろうか。
「今頃あの娘は藍に拘束されている筈。あとは邪魔されないように、あなた達を倒して帰るだけよ!」
「果たして、そううまくいくかしら?」
「私、強いわよ?」
「いや、家の方。」
「私を拘束するんじゃなかったの?」
「だから今しているだろう。
家事を手伝わせて動きを封じているんだ。」
「………」
咲夜は藍に服を借りて一緒に料理していた。
紫は知らないことだが、
この二人は仲が良いのだ。
勿論レミリアはその事を知っている。
「言うこと聞かなくて良いの?」
「いいよ、別に。
妖怪として尊敬はしてるけど、
恩も特にはないし命令聞かなきゃいけないわけでもないし、今回は酷いと思うからな」
「あら、冷たい」
くすくすと笑う咲夜。
藍の忠誠心は意外に薄い。
だからと言っても、彼女は主とは別の絆がある。
余計な心配はいらなかった。
まあ、無ければ無いで面白そう、
とは咲夜は口が裂けても言うまいと思った。
「藍さま、廊下のおそうじ終わりました!」
「そうか、ありがとう橙。
助かるよ」
藍が頭を撫でてやると、
橙は心地よさそうに目を細めて
藍にあまえる。
「ふにゃぁぁあ」
「はは、橙。顔が緩んでるぞ」
「だって、藍さまに撫でられてるからですっ」
甘え上手だな、と横目で見ながら大根の皮を剥く咲夜だった。
お嬢様も時々甘えてくる様な仕草をしてくるが、
もしああだったらどうだろうか。
あんまり素直じゃないしなぁ、
その時って。
ぼんやりしつつも手は休めない。
窓の外で鳥が歌い始めた。
最初のコメントを投稿しよう!