最強のバスケ選手

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痛みによる苦痛の表情を浮かべる少女の頬に、無遠慮に人形は触れる。 「それから、映画とかも見に行きたい。」 人形から紡ぎだされる言葉はまるで人間のようだ。 というのも人形は、何かを求められれば応えるが、求める事はしない。それは、人形という奴隷である事を、人形なりに理解しているからに他ならない。 だが、少女の側に居る人形はまるで人のように求めるのだ。 少女のその声で呼ぶ自分の名。自分にだけ甘えて欲しい。その笑顔だって、自分にだけ向けて欲しい。 その欲求全て、まるで人が人に恋をしたような、独占欲に、少女も、そして人形も気づいてはいない。 「いつか、今日じゃなくていいから、水族館とか遊園地とか行ってみたい。浅深と二人で、色んなとこ行ってみたい。」 人形の縋るような願いは、ちゃんと少女の耳に届いてる。 少女の身体の痛みが治まった頃、時計の針は、10時45分頃を指していた。 「大丈夫?」 「…………うん。」 「依智んとこ、行ける?」 「………うん。」 「仕事がなかったら、あの日一緒に行けたのにな。」 汗だくの浅深を横抱きにして、浴室まで運ぶ人形は、落胆の声を出す。
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