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「スミレ?」
どうかしたのかと、浅深がスミレの顔を覗き込めば、スミレはじっとりと睨むように浅深を見る。
浅深の頭に掛かっていたタオルを奪い取ると、浅深の部屋にある赤いソファに座らせ、ドライヤーの温風を当てる。
以外と不器用なスミレは一箇所に温風を当てすぎて、浅深の耳に軽い火傷をさせてしまった。
(依智に器用に出来ないか、相談してみよう……
そしたら、もっと浅深を甘やかせる。)
昼前、ほぼ無理矢理スーパーに浅深を寄らせると食材を買う。もちろん代金は全てスミレ持ちである。
「いいって言ったのに。」
「よくない。浅深は気にしすぎ。」
真昼間の路上。それは突如、なんの前触れもなく訪れた。
どこからか、男の悲鳴が上がり、それは尋常ではないほどに恐れに満ちて、そして角を曲がりこちらへとやってきた、その男は、血まみれであった。
「は、」
「……え?」
「助けてくれ!!」
サラリーマン風の男が、まるで化け物でも見たかのような形相で浅深の肩に手を置いたその直後に、ICHI BRANDである証のチョーカーを首から垂らした人形が、男、否、浅深目掛けて飛んできた。
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