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その間に割り込むように、黒い何かが浅深とスミレの前に現れたかと思えば、ガキキィと何かと何かが擦れる音。
「お怪我は?」
丁寧かつ、優しさを含んだその質問をした相手は、最近出来たばかりのICHI BRAND人形のサーシャであった。
浅深がモデルとなったサーシャは本人とは比べれば大分美化されている。
「ない、けど…」
膝丈の黒いワンピースにフリルがあしらえた白いエプロン姿の人形は誰がどう見たってメイドである。
皿にそのメイドは、襲ってきた人形の爪が変形し鋭利な刃物といっても過言ではない物をいとも簡単に素手で押さえ込んでしまった。
人形がここまで丈夫である事を知らなかった浅深は一瞬で青ざめた。
「浅深。その男連れて、安全な場所に行って。」
「え…。あ、うん。」
いつの間にか背後に立っていた金髪の少年に背を向け、浅深とスミレ、そしてサラリーマン風の男は逃げる為に走り出した。
「……どうしてこうなったんだか…。」
サーシャが押さえ込む人形は確かに自分が創った物である事を認識した依智は、「そういえば、」と思い出す。
あの人形の主人は、この間亡くなってしまったばかりではないか、と。
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