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「サーシャ。」
「ご主人さまの意のままに。」
ふわりとスカートの裾を揺らし、人形はすっかり豹変してしまった人形と主人であり創造主である依智の間に立ち、攻撃の機会を伺う。
先に動いたのは敵の方だった。爪を伸ばし、それを魔法で強靭な刃に変え、サーシャに襲い掛かる。
だが、サーシャにその攻撃が当たる前に青光りする大きな魔法陣が盾となり、攻撃を防いだ。
依智が人差し指で糸を動かした。それに応えるようにサーシャが右へと動き出す。
親指と中指を動かせば、サーシャは高く飛び上がり、敵の人形の頭上から膝を落とす。
普通の人間であれば、首の骨を折り、即死だろう。だが、敵は依智の創った人形である。人形には骨は存在しない。
不規則に動く手、指は、規則性はないが、依智が思うがままにサーシャが動く。
敵の人形が、サーシャに攻撃すれば、サーシャは避け、避け際に拳を鳩尾に減り込ませる。
「………っぐ…」
苦しげに吐き出された声に、依智は一瞬躊躇った。
「痛覚があるのか」と。
知らなかったが為の驚愕の躊躇い。
否、普通の暗示魔法や催眠術の類ではないと理解した。
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