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言わずもがな。モデルは依智の姉、浅深である。
が、もちろんその男はそんな事にはどうでもよかった。それよりも、その絵から溢れ出る狂気と美しさに魅了されたのだ。
二度と空を飛べないこの天使は、どのような表情をしているのだろうか。やはり絶望?それとも気が狂い、笑っているのだろうか。それとも、この姿のまま死んだか。
男はクツクツと喉で笑う。
「血に塗れた人形は、狂気に染まり、そして消え逝く。
だが、それが美しくもある!人形に感情などいらない。
この世界に必要なのは美しい物だけだ。
だから、私はお前達を愛する!」
近くに居た脅える女の人形の腕を引き寄せて抱きしめる。
人形からは良い香がした。バラの香である。
男は、壊れ物を触るかのようにゆっくりと人形の背中を撫で、そして呪文を唱える。
それは、魔王との契約の下でしか出来ない魔法。
感情を奪う禁術であった。
「…あっ…ああああああ!!」
人形の目にはうっすらと水の膜が張られ、時間が経つ事にダムのように溜まった水が目から流れ出す。
「ご主人、…さまっ…」
自分を創ってくれた創造主。自分を可愛がってくれた主人との永久の別れに、人形は涙した。
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