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「あ、ありがとう…。」
男の子が笑顔で差し出してきたのでクロノスは思わずお礼を言いながら受け取りそれを口に含んだ。
もしかしたら毒かもしれない、と気付いたのは既に飲み込んだ後だった。
しかし飲み込んですぐに、男の子がいった通りに魔力が少しだけ回復したのがわかった。
それにも驚いたが魔族が人間にそれを渡したのにも驚いていた。
学生のクロノスは学園で魔族は無差別に人間を殺す化け物だと習っていたからだ。
『人間さん。ずっとここに居たら危ないよ?血の臭いで魔物達が寄って来ちゃうかもしれないし。』
魔力が回復し傷も治ったのに立ち上がろうとしないクロノスを不思議に思ったのか、首を傾げながら男の子はそう告げた。
「あ、あぁ…そうだね。」
その言葉にハッとしたのかそう返事をしながら立ち上がった。
クロノスが立ち上がると男の子も立ち上がり再び籠を背負った。
『多分あっちに行けば三人くらい人間がいるよ。お友達?』
「…友達というか仲間だな。」
『お仲間かぁ。また此所の森に来た時は、怪我をしないように気をつけてね、人間さん。』
人間の気配がする方を指差しながら笑顔をクロノスに向けた。何故助けてくれたのか未だ疑問に思いながらも笑顔を向けてきた男の子に思わず笑みを浮かべた。
「ありがとう。次来る時は気をつけるよ。」
そっと頭を撫でお礼を言ったクロノスは頭を撫でていた手をはなし突然ガサガサガサッと音が聞こえた方を向いた。
そこにはリンク、セレス、リュイトの三人がいた。
「!クロノス…と魔族!?」
三人はクロノスと合流出来た事にホッと安心したような顔を浮かべたが、男の子の存在に気付いた途端顔を険しくした。
咄嗟に魔法を発動しようとしたセレスを止めたのはクロノスだった。
「クロノス?何故止めるのですか?」
魔族の男の子を庇った仲間のクロノスに怪訝な顔をし、セレスはそう問い掛けた。
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