白銀の華

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高鳴る鼓動、鳴り止まぬ地響き。 対となる銀の刃を両手に握り、私は顔を上げる。 前方から迫り来る一個師団。 対してこちらの勢力は、負傷者多数の小隊。 勝ち目なぞ存在しない。 さぁ、どうする……勝ち目がないなら逃げれば良し。だが、逃げたら大切な人達を失ってしまう。 どうしよう………… 途方に暮れる私は銀の刃を握り絞めたまま俯く。圧倒的武力の前で、私は諦めの感情しかない。 「隊長」 背後から声が聞こえ振り向くと、細身な身体だが、大斧を担ぎ直す男が私に笑みを向けていた。 その容姿は満身創痍と言っていいほど。先の交戦で負傷した傷からは血が流れている。 だが、彼はいつもの陽気な笑顔を浮かべていた。 「俺はまだ行けますよ。やるだけやって豪快に散ろうじゃないですか」 「そんななりでよく言うぜ。お前だけでも逃げたらどうだ?」 悪戯な笑みを浮かべて言う長身の彼は槍を杖代わりに立ち上がった。 それに伴い、他の皆も各々の武器を手に取り立ち上がる。 「隊長、どうしますか?」 真紅のショートヘアーの彼女は銀のガントレットをしっかりと嵌めて尋ねる。 私は瞼を閉じる。私の決断が彼等の命を左右する。 銀の刃をより強く握り絞め、私は顔を上げた。 「貴方達はよく戦った! ここで逃げても誰も攻めはしない! 残る者は私に続け!! 命絶えるまで戦う覚悟が在る者は私と共に戦おう!!!! 行くぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」 傷だらけの甲冑を身に纏い、白銀の髪を靡かせて私は走る。 大切なモノを護るため私は剣を振るう。 力尽きるまで私は叫び続ける。 立ち止まってはいけない。 振り向いてはいけない。 この命尽きるまで、戦乱を駆ける白銀の華として咲き誇ろう。
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