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帰宅途中の畦道、TVのノイズのような耳鳴りの中、僕と君の雨宿り。突然の夕立が偶然に僕らを襲った。
地蔵並びに併設されたオンボロの小屋。
風邪をひかないようにと通学僕は鞄からハンカチを取り出し体を濡らす雨水を拭き取る。
弱ったな、今日は塾なのに。これじゃあ間に合わない。
チラリ、目を少し右に寄せ、君を見てみる。
いつも賑やかな君は空を見ていた。
どんよりとした雲が支配している空を見ていた。
どこか悲しげで儚げな空を見ていた。
そんな君を僕は見る。
しかし、濡れて透ける制服のせいで目をすぐに逸らした。
イケない思いが芽生えそうになったところで理性が働き、はい、と僕は君にハンカチを差し出した。
幾許かの沈黙後、君は無言を貫きながらも僕のハンカチを取った。
濡れた髪、濡れた服、濡れた肌、拭き取る彼女は何処か艶やかで……。
止まないね、と僕は言う。
君は頷くだけで、再び沈黙は続いた。
クラスでは後ろ姿を見つめるだけだったけど、今憧れの君は横にいる。
それだけで、濡れたように汗が涌いてきた。
それでも、それでも……。
弱ったな、塾なんてどうでもいい。雨なんて止まなければいい。
僕と君の間の沈黙、夕立のノイズ。
僕の声に成らない想いが虚空に溶けていく、君に届くといいな。
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