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ヒナーside
あたしー諏訪部ヒナは護衛であり友達の「檸檬」と、ひょっこり出ていって音沙汰なしだったあたしの幼なじみ「勇太」とギクシャクしながらも校舎の見回りという「お役目」していた。
相変わらず勇太はぶっちょう面で、何も話さない…。
確かに勇太はあまりお喋りな方じゃなかった。でもここまで気詰まりなヤツじゃなかった。
勇太はあたしじゃなく、檸檬とばかり話している。
内容は「狼に変身した後の変えの服をどうするか?」
中でも感情の高ぶるに任せて変身!が一番不味いらしい。目覚めたら裸で路地に転がっている最悪の状況になるらしい…。
うっ…確かにそれは嫌だ…。
聞こえてくる会話はあたしの神経を逆なでする。べっ、別に!!ヤキモチ焼いているわけじゃないけど…………。なんかイライラする。
でも、あたしのイライラも檸檬や勇太の緊迫を含んだ声によって吹き飛んだ。
檸檬や勇太があたしを庇うように、立つ先に…それはいた…。
鋭利な爪。
凶悪な牙。
巨大な体躯。
巨大な狼がそこにはいた。別ににコレだけなら勇太や檸檬の親戚連中だとあたしは思っただろう。
だが、体を覆う毛は『黒』でも『銀』でもなく『紫』…。
数年まえから、諏訪部の爺婆たちが血眼になって追っている最悪の狼。
紫の雷を操り、数多くの追跡者を殺すことなく返り討ちにしている狼『紫狼』がそこにいた。
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