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月明かりは暗い森を照らし、木々は優しくその光を周りに散らす。
月明かりは太陽のような強さはない。
太陽の光のような、全てを照らすなどと恩着せがましいことはしない。
ただただ全てを受け入れ、ただただ静かに薄明かりの中の真実を見せる。
見せる物が全て幸福でも無ければ…、不幸でもない…。
眠り込んだ紫狼に近づく人影。
亜麻色の髪を揺らし紫狼に歩いていく人影。でも、その歩みに焦りも無ければ、躊躇いもない。
ちょっと廊下で見つけた友達に、声をかけるのと変わらない。
翡翠色の珍しい瞳に宿るのは、親愛と戸惑い。
そして大多数の
『歓喜』
やがて人影は紫狼の本にたどり着く。
女性特有の丸みを帯びた体。亜麻色のふわりとした長髪に翡翠色の大きな瞳。小さな体つきにしては高校生離れした女らしい体躯。人懐っこそうな顔立ちと、類い希なる美貌。
銀狼『饗庭檸檬』
ー彼女は見ていた。志郎が家から出て、紫狼となり山で修行する様子を全て。
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