誤算!崩れ始める原作。

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顔は平然としているが、内心は汗ダラダラで、背中とシャツがくっ付くのが感じられる。 早く話題を切り替えなければ! 「まあ、それは良いとして。何で檸檬ちゃんが君に運ばれてきたのかしら?」 唐突に深祈は話題を切り替え、事の顛末を聞いてきた。 ほっ…。どうやら神は俺を見捨てていなかったようだ。ここで一気に話題転換を図らなければ勘の良い深祈のことだからまた何を気づくかわからない。 「よく分かりませんが、どうやら寝不足みたいです。立ったまま寝てしまったようなので、抱えて連れて来ました。」 「お姫様抱っこでね~。生徒の前で。やっぱり、君は彼氏くんじゃないの?」 「何度も言いますが、自分は檸檬の彼氏ではありません。お姫様抱っこをしたのも、利便性を追求したからです。」 何を言いたいんだこの人は。俺をそんなに檸檬の彼氏にしたいのか。やっぱりこの人苦手だ。人の心を見透かしたみたいに聞いてくる。 早く行かねば、ここにこれ以上いるのは良くない。 「でも~ね。それだけで、檸檬ちゃんを抱っこできる。周りの目があるなかで。」 「自分は檸檬と幼なじみ兼友人でそれ以上でも、それ以下でもありません。失礼ですが、ホームルームに遅れてしまうので失礼します。」 そう言って話を強引に断ち切り、檸檬のとなりから立ち上がり出ていく。 これ以上、心を見られたくない。 「幼なじみ兼友達ね~~。」 逃走は間に合わず深祈の言葉に捕まる。 「何が言いたいんですか………。」 自分の言葉に嫌が混じっていたのは否めない。結局何が言いたいんだこの人は 「ねえ…。友達兼幼なじみなだけの女の子を人の目がある中で、抱きかかえる事が出来ると本当に思う?」 「…………………。」 俺は答えない。 答えたら、押し留めていた気持ちが、誤魔化していた心が。壊れてしまう気がする。 「好きなんでしょう?檸檬ちゃんが…………。」 答える事なく俺は保健室を出た。
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