会敵弐。見通しの甘さ。

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傷だらけの檸檬に留めを刺すべく、振り下ろされた脇差し。 その刃先はしっかりと檸檬の首筋を狙っており、斬れば致命傷になることは確実だった。 「せいりゃぁ!」 俺は久しぶりに貰った戦闘技術の能力をフル活用して、三郎が檸檬に刃を振り下ろす前に下から突き上げるようにショルダータックルをかます。 檸檬を切り裂ことした凶刃は、突然の衝撃により軌道をそれ、俺の方袖を浅く切るだけにとどまった。 俺の攻撃はショルダータックルだけに終わらず、タックルをかました低い姿勢から伸び上がるように右足のハイキックが胴を襲う。 だが相手は現役の殺戮人形。初回の攻撃こそ通ったものの、二回目のハイキックは空中にいながらも片手でブロックしてきた。 メキメキ 木の幾らか軋む音がするがそれだけ。まるで自分の体を自慢するかのような三郎だが、生憎誰も今ので終わりなんて言っちゃいない。 寧ろ本命はこっち、今のタックルもキックも言わば牽制。 ボクシングでも、基本は二回目ジャブの後に、ストレートを打つ。 それと同じ。 三郎を襲ったハイキックの右足を主軸にし、今だ残るその回転スピードを体全体に乗せ、返す左足を振り切る。 所詮、回し蹴り。 だがスピードとパワーの乗った一撃は、空中に未だ浮く三郎のガードを真っ向から押しつぶし、固い割には軽い体を地面に叩きつけ、なおも勢い止まらず滑らした。
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