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横滑りしながら、地面を転がっていく三郎。
俺は転がっていく敵を視界に捉えながら、檸檬に駆け寄る。
変身が解けているため、服など着ていないが、お構いなしに傷を調べていく。
……………。
よかった。出血は酷いが傷は浅いようだ。
そのとき、檸檬の瞼が僅かに開いた。
「……………し、志郎くん…?」
僅かに開いた目から涙が少し流れる。
俺は目から流れた涙を指で拭ってやる、
「よくがんばったな。もう大丈夫だ、檸檬。あのボロ人形しばいて、早く家に帰ろうな」
安心させるような声で呟くと、檸檬は少し笑い気絶した。
上着を脱ぎ、檸檬の傷に触れないようにそっと優しくかける。
「…いつまで寝てる気だ、この木偶(でく)人形。大して効いてないことは分かってんだぞ。」
未だに俺に吹き飛ばされて地面に転がっている三郎。
派手に蹴り飛ばしたが、所詮は人形。
人間が受ければ、軽く骨ニ、三本へし折る一撃も、感覚神経さえない人形にどれだけのダメージを与えるかも怪しい。
まるで俺の言葉を合図にしたかのように、人間の関節では到底真似できない起き上がり方をする三郎。
光すら灯らない瞳がこちらを見つめる。
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