会敵弐。見通しの甘さ。

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そんなBBA…(チラッ、チラッ……ふう…。)の眼下の元で戦闘が続く。 紫狼が放つ紫球は本来の威力は無くとも、その数で三郎を圧倒する。 飛翔するクナイは紫球に叩き落とされ、紫球が着弾するたびに三郎の体は少しずつ削られていく。 偶然にも、死を招く亡霊姫と同じ色あいをした紫球は、確実に三郎を破壊へと招こうとしている。 だが三郎もこの絶望的な状況に諦めていなかった。 今は三郎に呑まれてしまったとはいえ、彼の精神は三郎の中に存在していた。彼は当初、三郎の体を使い目的を果たすはずだったが、自らの想定以上に三郎の邪気は強く、逆に精神を乗っ取られ、ただただ破壊と殺戮に手を染めようとしていた。 だが、紫狼にその身を限界まで破壊されたことにより、コントロールを何とか奪い返すことに成功していたのである。 大義のために、忌み嫌った邪法や外道に手を染めてまで手に入れたこの力。 もはや、自分のした事は許されることはない。確実に自分だけではなく一族にまで被害が及ぶだろう。 だが引く訳にはいかない。諦める訳にはいかない。自分の為に危険を犯してくれた仲間のためにも、そして何より里の未来の為に彼は破壊される訳にはいかなかった。 だか、勝てるはずはない。紫狼は常識を越える化け物。傷を付けることさえできない。だから、逃げる。 逆転の為に放った第三の拳は紫球にぶち当たりながらも、確実に紫狼へと迫っていた。 もはや、クナイは尽き、この身を紫球が削って逝くがそんなことはどうでもいい。 座してその時を待つ。 そして、第三の腕は紫狼に届くが、紫狼が振るった剛爪によって切り裂かれる。 成った その瞬間、砕かれた第三の腕の先から毒々しい煙が吹き出し紫狼を包んだ。
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