1話ー亜麻色の髪の乙女

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唐突に浮遊感がなくなり俺は目を開けた。 時間にしておよそ30秒程度、その間に俺は能力を貰ったわけだが…。 あの爺勝手に…『創造(偽)』を付けやがった。 コレだけじゃつまらんじゃろ、と要らん好意で付けた爺。 別に爺の好意は悪いことではないが、こんなチート能力があると、自分が堕落しそうで怖いのだ。 まあいいや、緊急事態以外にはなるべく使わないようにしよう。 そんな直ぐにぶっ壊れそうな誓いを立てて現状確認に入る。 ーーーーーー よし、年齢は十歳程度になっているな。これで、ヒナや勇太や檸檬の幼少期に原作介入が可能になった。自分が狼に変身できることは隠して、一般人の友達として近ずこう。狼になれるとバレて諏訪部や爺婆どもに利用されるのはイヤだし。 そんなことを考えていたら、水の音と誰かの泣く声が聞こえてきた。 ーーーーーー 檸檬side わたしは友達がいなかった。 わたしのお父さんはイギリス人で、お母さんは日本人。 お父さん譲りの翠色の目と、日本人離れした茶色ぽい髪のせいで、わたしはいつもクラスで外国人(異端者)として敬遠されていた。 そんな時に、ちょうど女の子の間で流行り始めたのが、アクセサリー集めだった。 もしこれに乗れなかったら、もう後がないと思っていたわたしは、お母さんが大事にしていた成人の証であるエメラルドのイヤリングをこっそりと持ち出してしまった。 でもわたしはそれを道端の石に躓いて、落としてしまった。 ひとつは慌ててかがんで拾えたけれど、もうひとつは運悪くわたしの爪先にぶっかって、そのまま、ポチャンと小川の中に。 小川の流れはそんなに速くなかったんだけれど、土手の雑草、うっとうしく茂った草のせいで簡単に見つけることができなかった。 協力してくれる人は誰もいない。 お父さんお母さんに言える分けないし、一緒に探してくれる友達だっていないし、わたし一人で泣きながら川の中を探し続けた。 「ー大丈夫か?」 その声が聞こえるまでは…。
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