忘れる唄

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京都の冬は、寒い。 夕暮れの紫が深みを増したタイミング。姿が見えなくなるのを見計らって手を繋ぐ。寒いから、という理由より嫌がるそぶりが好きだったからが正しい理由なのかもしれない。すきやでー、なんてニヤニヤしながら無理矢理握りしめた手は冷たく、かさついている。お世辞にも整ってはいない顔が赤らむ、睨みつける。瞬間、あほと八重歯を見せて笑う。照れを含めながら。 好きだ 好きだ、好きだ! 一緒にいたかった。 いつまでも一緒にいれる気がした。
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