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「すまない、離婚してくれ。」
目の前には懇願して頭を下げてくる夫。
否、夫とも呼べる程、結婚して日にちは経っていない。
何てったって入籍を済ませて幾日もしないのだから。
机の上に置かれた離婚届。世間では新婚と呼ばれる家庭にこれ程、物騒なものはない。
「はぁ…。…はぁっ?!」
前半はあまりの事に拍子抜けした私の返事。それを聞いてがばっと上半身を起こした相手と目が合い、叫んだのが後半である。
「ちょっと待ってよ、裕一さん。私、全然、言ってる意味が……」
両者の間に重苦しい沈黙。
確かにこの結婚は大恋愛の末ではない。お見合いという形式張ったものだった。
結婚適齢期を迎え、同世代が次々と結婚していく現状を目の当たりにして焦る私に、降って湧いた見合い話。
どうやら気立てや器量の良さを会社の幹部に買われたらしく、それが上司から上司を伝って私に流れ込んだというもの。
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