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襾津廼の落下騒動からしばらくして、朝食が完成したらしい。
襾乘鴣が大きめのバスケットに布を被せた物を、離れの炊事場から家の中へと運んでいる。
襾津廼は釜戸で火の後始末をしていた。
そしてやまつばめは、小さめの重箱に今朝の朝食を詰めていた。
それぞれの仕事を終え、彼らが食堂と呼ぶ、ダイニングに集まっていく。
双子より少し遅れ、やまつばめが後ろにもう一人を伴って入ってきた。
朝食だと起こされるまで熟睡していた男だ。
尖った長い耳に白銀の長い髪の、彼はエルフだ。
記憶を無くし、名前すら思い出せない彼は、やまつばめに『うみたか』と呼ばれている。
うみたかはまだ眠そうに目を擦りつつ、自分の席に付いた。
全員が座っているところをぐるりと見渡し、やまつばめは静かに両手を合わせる。
彼らもそれに倣う。
「では、いただきます」
やまつばめの声の後、三人も声を揃えていただきますを言った。
食事中、やまつばめはそういえば、と切り出す。
「…俺、今日は隣町の住宅街に庭木の剪定に行ってくるから、帰るの遅くなるよ」
「…今回は何日くらいかかりそう?」
襾乘鴣がいつものように尋ねる。
やまつばめはそうだねぇ、と呟いた。
「わからないなぁ。毎回、依頼が後から追加されるから、おおまかに見積って2~3週間以内に終わらせたいかな」
苦笑しながら答えると、次は襾津廼が尋ねた。
「……また、一人で全部作業を…?」
「いや、大丈夫。前々から、技術を少しずつだけど教えてきたメンバーが現場に入れる腕前になったから、今回はそう思うとかなり楽だよ」
「…何であれ、無理はしすぎないように」
「わかったよ」
にっこりと笑って答え、やまつばめは一足先に空にした食器を片付けに入る。
「みんなはゆっくり食事を。俺は仕事に向かうから。では、ごちそうさまでした」
両手を合わせて彼は言うと、食器を持って外に行った。
しばらくして、風呂敷に包んだ包みを四つ持って帰ってくる。
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