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「これで良かったのかしらね…?」
一人の女性は問う。
真っ白い空を見上げて。
「それは、本人に聞いてみないとどうにも分からんな…」
悲しいような、嬉しいような、そんな感情が声になって現れる。
「出来れば、聞いてみたかったな」
自嘲気味に、女性の隣に居る男性は笑う。
「ふふ…貴方と似て、さぞかし不器用な男の子になっているんでしょうね」
「馬鹿言うな。さぞかしイケメンになっているはずだ」
「それは無いですね」
「完全否定!?」
相変わらず酷い事をすんなり言う女だと、再確認する。
「ま、まあ、幸せになってくれればそれでいいんだ…」
「イケメン以外は幸せになりませんよ?」
「それ、全国の大多数の人不幸だよ!?」
とツッコミを入れて咳払い。
「とにかく私達の役目はもう終わりだ」
「そうね…一ページ分だけなんて悲しいわ」
「そこ!?てか俺なんてこの一ページで三回ツッコミいれちゃってるよ…」
「悲しい性ね…」
「誰の所為だと思ってる!?」
「取り敢えず、ツッコミもそこまでにしてそろそろ私達も行きましょう」
「いやだから一体誰の所為だと…」
その女性はもう聞いていない。すたすたと前を歩いていく。
「ったく…」
ため息を零して後を追いかける。
その先は、見たこともないほどの闇。
ダークホールさながらのその闇は、二人を呑み込んで消し去った。
そこにはもう、誰もいない。
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