壱話

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夜の帳が落ちた平安の都は妖魔の巣窟だ。       「やっべえよ、この状況。どうする?」     「どうしようもないだろう」       大路の真ん中で妖怪に囲まれた男が二人、背を預けながら剣を構えている。     周りの妖怪は蜥蜴<トカゲ>や百足<ムカデ>、大蛇に蜘蛛の四匹。 大蛇と百足は男二人の身の丈より三倍はあり、蜥蜴と蜘蛛も横幅が大人一人寝転べそうな大きさだ。     男の一人が盛大にため息をついて、もう一人を睨む。       「もとはと言えばお前のせいだぞ、貞光! 女人などにほいほいついていくから……」     「あー、もう分かったよ!!いちいち怒鳴るなって!」       貞光と呼ばれた男は背中合わせの男に怒鳴り返した。
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