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左右に一本ずつ剣を持った貞光は青の狩衣を身にまとい、茶髪がかった髪を高い位置でしばっている。
妖怪の様子をうかがいながらも、貞光はもう一人の男に尋ねた。
「第一、なんでお前がここにいる。今日の見回りは俺と李武のはずだろ」
「それは 妖気を感じ取られた頼光様が、お前のところに行けと命じられたからだ。
さすが頼光様!! いつ何時たりとも気を抜かずお心を配っていらっしゃる」
そのまま目を閉じ、感極まっている男に貞光は本当に小さく呟いた。
「……お前、本当に頼光馬鹿だよな、綱」
「なんだと!?」
目じりを吊り上げた綱は
貞光の方に向き直った。
綱は深緋色の狩衣を着て、胸元より長い漆黒の髪を首の後ろでしばっている。
構えた刀はどこかの名匠が作ったのか精巧な造りだ。
彼は冷静な雰囲気をかもしだしているためか
実年齢の19より年上に見られることが多い。
そんな綱はある事に触れられると即切れる。
それは己の主に対する侮辱だ。
「頼光様の名に馬鹿をつけるとは何事だ!? 頼光様が許しても俺が許しさんぞ!!」
「なんでそうなる! 切れるとこおかしいだろ!」
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