壱話

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 左右に一本ずつ剣を持った貞光は青の狩衣を身にまとい、茶髪がかった髪を高い位置でしばっている。        妖怪の様子をうかがいながらも、貞光はもう一人の男に尋ねた。       「第一、なんでお前がここにいる。今日の見回りは俺と李武のはずだろ」       「それは 妖気を感じ取られた頼光様が、お前のところに行けと命じられたからだ。  さすが頼光様!! いつ何時たりとも気を抜かずお心を配っていらっしゃる」       そのまま目を閉じ、感極まっている男に貞光は本当に小さく呟いた。       「……お前、本当に頼光馬鹿だよな、綱」 「なんだと!?」       目じりを吊り上げた綱は 貞光の方に向き直った。       綱は深緋色の狩衣を着て、胸元より長い漆黒の髪を首の後ろでしばっている。   構えた刀はどこかの名匠が作ったのか精巧な造りだ。   彼は冷静な雰囲気をかもしだしているためか 実年齢の19より年上に見られることが多い。      そんな綱はある事に触れられると即切れる。     それは己の主に対する侮辱だ。         「頼光様の名に馬鹿をつけるとは何事だ!? 頼光様が許しても俺が許しさんぞ!!」       「なんでそうなる! 切れるとこおかしいだろ!」
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