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彼女は突然そう言った。
「君は超能力者か何かかい?」
ストーカーがいるような容姿をしていない俺は、苦笑混じりで冗談を言った。
「そんなところよ」
彼女は水色のカクテルの入ったグラスを傾けながら肯定する。
「予知能力って知ってる?」
「未来が見えるっていうアレの事かい?」
突然変な事を言い出した彼女の問いにそう答えると、彼女はコクリと頷いた。
「君はその予知能力を持ってるのかい?」
なんとなく話しが見えてきて、俺がそう訪ねると彼女は再び首肯した。
酔いが回っている俺は真剣に疑うのも馬鹿馬鹿しく思い、彼女の面白そうな冗談に付き合う事にした。
「それで、未来の俺も下着で寝てるって訳かい?」
「正確には一年後の貴方よ。私、一年後の未来しか見えないの」
「それはまた不便な力だな」
「まったくよ」
一年先の事が分かった所で役に立ちそうにないと俺は思った。実際、彼女はスピリチュアルな格好ではなく普通のスーツを着ているのだから、それほど実生活の役には立っていないのだろう。
「あそこにいる男の一年後はどうなってるんだい?」
興味本位で遠くにいる男性客を指差して尋ねると、彼女は首を振った。
「私、自分の未来しか見れないの」
そう言う彼女に俺は疑問を投げかける。
「俺のパンツ姿は見えたんじゃないのかい?」
「正確には、私の隣で眠る下着姿の貴方が見えたの」
俺はニヤリと笑った。
「なるほど、面白い方法のナンパだ」
「まさか。貴方はナンパされる容姿じゃないわ」
そうストレートに言われると自覚してるだけに傷つく。
「予知した未来は絶対に変わらない。だけど私は貴方に興味がない。これっぽっちも」
「なるほど」
俺は再び同じ台詞を言う。ここで俺はやっと彼女の言いたい事が分かった。
「俺に未来を変える手助けをしろと、そういう事だな?」
「ご名答」
「だが良いのか?」
「なにが?」
「話しかけなければ出会わなかっただろう?」
逆にこれが引き金になるのではと思い尋ねる。
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