未来から始まる恋

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「三日前、私も同じ事を思ったわ」  三日前。その日も俺はこのバーで酒を飲んでいた。 「三日前、君もここに居たのか」 「それからよ。こんな未来が見え始めたのは」 「熱烈な一目惚れだな」  彼女が睨むので俺は冗談だとフォローした。 「知り合うかどうかはスイッチじゃないみたいなのよ。だから話しかけた」 「それで、俺はどうすればいい?」 「私の未来の為にバーに来ないでくれれば良いわ」  接点を潰すのは確かに良策だ。だがこのバーはとても気に入ってる。 「せめて曜日制にしないか?それぞれ来て良い曜日を決めてさ」 「それじゃあ会おうと思ったら会えちゃうじゃない。それじゃあダメなの」  もっと真剣に運命と立ち向かえと彼女は俺を叱る。確かに、俺はなんとしてでも金曜日を確保しようなどと考えていたので、素直に反省した。  彼女の言葉通りなら、お互いが望んでも会えないよう、彼女もこのバーには来なくなるのだろう。それならば五分五分の提案だ。  俺は大人しく従う事にした。 「分かった。もうこのバーには来ないよ」 「ありがとう。私ももう来ないと約束するわ」  マスターが微妙な表情で俺たちを見ている中、そんな約束を俺たちは交わした。  俺は支払いを済ませ、鞄を持って立ち上がる。 「待ちなさい」  彼女が何故か俺を睨みつける。はて、何か気に障る事をしただろうか? 「なんでまだ同じ未来が見えるのよ」  どうやら未来が変わっていないらしい。 「貴方、こっそりこのバーを使う気でしょ」 「使わないよ。それに、それが理由ならその場に君もいるって事だろう」  俺の指摘に彼女は納得し、何故未来が変わらないのか頭を捻る。 「今ならまだ引き返せるって事だろう。俺が店を出て、君もここを去ればもう会えない。未来も変わらざるを得ないだろう」 「なるほど、そうも考えられるわね」  それじゃ、と言って去ろうとする俺をまた彼女が呼び止める。 「もしまた未来が変わらなかった時、会えないんじゃ対策が立てられないわ。これ、私の携帯の番号」 「確かにそうだな」  彼女は俺に数字を綴った紙を渡し、俺は名刺を差し出した。 「それじゃあね」 「ああ、さようなら」  俺はそう言ってバーを後にした。彼女もたぶん、すぐ後にバーを去っただろう。
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