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「別れてほしいの」
田無香奈子は、はっきりとした声で切り出した。
日曜の午後のオープンカフェ。街中は人が雑然としていて、皆早足で通り過ぎてゆく。
「ちょ……ちょっと待ってくれよ、香奈子」
香奈子の向かいの席で、大町治は思ってもみなかったことに狼狽える。
フリーターの治にとって、香奈子と付き合うと言う事は、信じられないような出来事だった。
田舎から出てきた野暮ったさが抜けきらず、服装などには気を遣った事もない治と違い、スラリとしたモデル風で、いつもブランド物を身に纏っている香奈子。
有名大学を出てそのまま商社勤務。収入だって治とは桁違いだ。
不釣り合いな事この上ない二人。
出会いは人には言えないような、インターネットの世界ではあったが、治は香奈子に初めて会った時から、真剣に付き合おうと心に決めた。
そしてそれは、香奈子も同じだと思っていたのだ。
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