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まだ昼下がり、レミリアは店を出、来た道を引き返している。
目当ての物を手に入れ上機嫌。
日傘を差しそそくさと帰っている。
紅茶を買ったときに、女主人から店で飲んでいくことを進められたが、今回ばかりはお断りした。
確かに店で淹れて貰った方が断然美味しいのだが、これは真っ先に自分で淹れてみたいのだ。
自分の事ながら、妙な意地である。
紅茶をカードに収納し、女主人に礼を言うやいなや飛び出すように店を後にした。
そして、館と町の中間点の峠にさしかかった所で、はっきりと感じた。
見も凍るような寒気、ざわめき、明確な殺意を。
緩んでいた気持ちを引き締める。
そして見つけた。
崖の上に、黒衣の上にズタズタになったマントを羽織った女性を。
眼光鋭く、纏う雰囲気は重い。
黒衣の女性は呟く。
「その"気"…ただ者ではないな。」
「…だとしたら、どうするの?」
挑発的に応える。
刹那、黒が目の前に現れた。
「…手合わせ願う。」
「っ!?」
「…命を賭けて。」
放たれた蹴りをしゃがんで避ける。
しかし日傘が弾かれ、その身が日光に焼かれてしまうため、転がるように木陰へ逃げ込む。
「つ…、問答無用ね…」
黒衣の女は、レミリアを見据える。
「…どうした、来ないなら、こちらから行く。」
黒衣の女は一足で吸血鬼に襲いかかった。
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