龍を纏う者

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レミリアが使ったカードには夜を収納していた。 それも、ただの夜じゃない。 最も力を発揮できる満月の夜だ。 だが、あくまでも一部だ。完全に力を発揮できるわけじゃない。 「…面白い。」 捕まれた拳に力を込める。 「これ程の実力…あの鬼以来久しぶりだ。」 息を込めると、拳から気が発せられる。 レミリアは数歩分、衝撃に押される。 「…あなたも面白いじゃない。」 槍を構え直す。 「私は貴女みたいな猛者は初めてよ。」 両者の間で緊張感が高まる。 「残念だ。」 黒衣の女は語る。 「互いに最高の状態で戦いたかった。」 レミリアは冷や汗をかきながらも笑みを浮かべて答える。 「全くの同感だわ。」 失われた体力は戻っていない。 この"夜"も長い間は保たないだろう。 「だから、」 槍に魔力を集める。 「また会いましょう?」 「っ!?」 レミリアは大上段から槍を地に叩きつける。 砂塵があがり、瓦礫が黒衣の女を襲う。 「私は紅き館の主。続きがしたいなら、訪ねなさい?」 レミリアは言うや否やこの場から離脱する。 砂塵と夜闇が晴れる頃には、その者の姿はなかった。 「紅き館か…」 "気"の残滓は残っている。 楽しみだ。 そう心の底から思いながら、残滓を辿る。
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