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真夜中、湖畔に佇む紅き館は夜霧に霞み、月が湖に映え幻想的な雰囲気を醸す。
その空間、闇にとけ込むように来訪者が館を目指す。
その者の闘気は冷気を帯び、辺りの空気を冷やしていく。
決戦の時だ。
館にたどり着くと、途方もない気の奔流を感じる。
昼に対峙した彼女の気ではない。
爆発するような気の奔流のせいで彼女の気を探れない。
いや、何とか見つけた。
屋根の上に佇むその姿は月を背負いこちらを見下ろす。
「来るとわかってたわ。」
少女が語りかける。「そして、今宵は満月。あなたが望んだとおり、最高の状態よ。」
ふわりと地に降り立つ。
「…そのようだな。」
彼女の気は昼の頃とは比べ物にならないほど研ぎ澄まされている。
「さあ、始めましょう?」
澄んだ声で、開戦が宣言された。
片や拳を構え、もう一方は槍を構える。
互いに集中力を限界まで高める。
極限まで高まる魔力に地は震え、水面は波打つ。
動くは同時。
互いの全力をそれぞれの獲物に乗せ突き込む。
轟っ!と打点を中心に烈風が巻き起こる。
力はほぼ同等、一瞬止まり、弾かれたように互いに距離をとる。
「堅い拳ね…。」
「舐めるな。」
軽い言葉の後、打ち合いが始まる。
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