龍を纏う者

7/10
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
真夜中、湖畔に佇む紅き館は夜霧に霞み、月が湖に映え幻想的な雰囲気を醸す。 その空間、闇にとけ込むように来訪者が館を目指す。 その者の闘気は冷気を帯び、辺りの空気を冷やしていく。 決戦の時だ。 館にたどり着くと、途方もない気の奔流を感じる。 昼に対峙した彼女の気ではない。 爆発するような気の奔流のせいで彼女の気を探れない。 いや、何とか見つけた。 屋根の上に佇むその姿は月を背負いこちらを見下ろす。 「来るとわかってたわ。」 少女が語りかける。「そして、今宵は満月。あなたが望んだとおり、最高の状態よ。」 ふわりと地に降り立つ。 「…そのようだな。」 彼女の気は昼の頃とは比べ物にならないほど研ぎ澄まされている。 「さあ、始めましょう?」 澄んだ声で、開戦が宣言された。 片や拳を構え、もう一方は槍を構える。 互いに集中力を限界まで高める。 極限まで高まる魔力に地は震え、水面は波打つ。 動くは同時。 互いの全力をそれぞれの獲物に乗せ突き込む。 轟っ!と打点を中心に烈風が巻き起こる。 力はほぼ同等、一瞬止まり、弾かれたように互いに距離をとる。 「堅い拳ね…。」 「舐めるな。」 軽い言葉の後、打ち合いが始まる。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!