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館の横の森の中、一枚のカードを取り出す。
「…ふぅ。始めるか…」
これは他人には…、特に咲夜には見せられない。
過去の己など、見せられはしない。
咲夜は歩き回っていた。
今日は門番ではないことは聞いていたのに、美鈴が部屋にいなかったのだ。
レミィちゃんに聞いてみると、
「さぁ、自分を叩き直してるんじゃないかしら?」
と、意味有り気な笑みと共に言われたが、館内のどこにも見当たらなかったのだ。
門にさしかかったところで、門番の二人から外に出たことを聞いた。
探しに行こうか迷っていると、森の方から轟音が響く。
慌てる二人を差し置いて、咲夜は走り出した。
後ろから響く制止の声を振り切って。
「美鈴お姉ちゃんっ!」
駆けつけた時には美鈴は傷だらけで倒れていた。その先には黒衣の女が立っていたが、忽ち消え去ってしまった。
「…う…ぐ、咲夜、ちゃん?」
「美鈴お姉ちゃん、あいつにやられたの?」
「…大丈夫、もう怪我は治ってるから。」
確かに傷は癒えていた。腕の傷を除いて。
「…この怪我…」
三年前、自分が付けた傷だ。
「ん、これはちょっとね。心配ないから大丈夫よ。」
美鈴は自分を責めもせずに笑顔で話しかけてくれた。
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