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ルーウェンは、船の縁に手をかけて、
「わあっ」
と声をあげた。
風が頬をなで、穏やかな海面は日光を反射して眩く輝いている。
磯の香りを鼻孔いっぱいに吸い込んで、ゆっくりと吐きだした。
大陸で育ったルーウェンは、海を見るのも、船に乗ることも、何もかもが初めてだった。
その美しさ、荘大さは、強行軍と言っても過言ではないこれまでの旅の疲れを、一気に吹き飛ばしてくれるような気がした。
海水に手が届かないかと身を乗り出したルーウェンに、苦笑混じりの声がかけられた。
「ルー、落ちるなよ」
声の主はアサヒ。ルーウェンが学園でペアを組む剣術使いだ。
国立クイ学園は、国が人材育成の目的で創設した、大規模な学舎である。
設けられた専門学科は無数に及び、また敷地も一日では見て回れないほど広い。
ルーウェンはその中の精霊師育成学科に、アサヒは剣術師育成学科に籍を置いている。二人とも今年入学したばかりの初等部だ。
クイでは入学と同時にペアを組むシステムがあり、ルーウェンはアサヒと組んでいる。
「落ちないよ」
ルーウェンはムッとしてアサヒに言い、乗り出した身を戻した。
船は、出港したばかりだった。
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