プロローグ

2/14
9475人が本棚に入れています
本棚に追加
/252ページ
とある国の、大きな洋式の屋敷の中。 一人の30代の男性が落ち着きのない様子で、廊下を右往左往していた。 男の目線はチラチラとある扉に向かっており、その扉の前でうろうろとしている。 その後ろで、使用人であろう人達も心配そうな目で、その男性と扉を見ている。 不気味な静けさと緊張感が、この廊下を覆っていた。 やがて、一つの産声が扉の先から微かに聞こえた。 それが聞こえた途端、右往左往していた男の足が、止まり、目を大きく開けて扉を見た。 使用人達も同様で、息を飲み、見守る。 皆の目線は、扉に向いている。 そして、三分程すると、扉が開いた。 二人の看護婦らしき白衣を着た女性が、優しい表情を浮かべ、二人の産児を抱いていた。 部屋の奥では、一人の女性がベッドに横たわり、嬉しそうな目でその産児を見ていた。 医者らしき女性もその傍らに座っており、疲れきった色を浮かべていた。 やがて、看護婦の女性の一人が優しい表情で、男性に言った。 「元気な女の子と男の子です」 それが、姉の神無月 海と、弟の神無月 空の誕生の時だった。    
/252ページ

最初のコメントを投稿しよう!