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とある国の、大きな洋式の屋敷の中。
一人の30代の男性が落ち着きのない様子で、廊下を右往左往していた。
男の目線はチラチラとある扉に向かっており、その扉の前でうろうろとしている。
その後ろで、使用人であろう人達も心配そうな目で、その男性と扉を見ている。
不気味な静けさと緊張感が、この廊下を覆っていた。
やがて、一つの産声が扉の先から微かに聞こえた。
それが聞こえた途端、右往左往していた男の足が、止まり、目を大きく開けて扉を見た。
使用人達も同様で、息を飲み、見守る。
皆の目線は、扉に向いている。
そして、三分程すると、扉が開いた。
二人の看護婦らしき白衣を着た女性が、優しい表情を浮かべ、二人の産児を抱いていた。
部屋の奥では、一人の女性がベッドに横たわり、嬉しそうな目でその産児を見ていた。
医者らしき女性もその傍らに座っており、疲れきった色を浮かべていた。
やがて、看護婦の女性の一人が優しい表情で、男性に言った。
「元気な女の子と男の子です」
それが、姉の神無月 海と、弟の神無月 空の誕生の時だった。
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