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「確かこの木、だったか」
私はあの時腰掛けた木に触れて、対になる木を見上げた。
枝に結ばれた黄色いリボン。
「――彼女は、先日事故で亡くなったんです」
娘はゆっくりと手を伸ばし、不器用な手つきでリボンを手にとった。
「自分の幸福は、この幸せの『黄色』いリボンに託していると、笑いながら私に伝えてからすぐに」
呆気ないものでした――と彼女は寂しそうに云った。
「彼女の親は、葬式をしてくれず、私は会う事がなかったのです」
罪深い親だ、とは思ってはいません――彼女はリボンを優しく撫でて、獣道を降っていく。
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