穏やかなる『緑』の原で

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私は、柑橘水のシャーベットを頬張ると、アトリエを見回す。 朝日が染み込むアトリエは寂しく、誰の笑顔も無い世界。 これは私が求めている世界とまるで逆の世界。 ――愛は全てを塗り替える。私はその言葉を幾度か呟いて、シャーベットの空をごみ箱に放り込んだ。 その瞬間! ドアを威勢良く開けたのは、黒い髪の男。 「おう! 元気か!」 彼は自らに生えた無精髭を弄りながらもずかずかと入り込んで、地べたへとどしりと座り込んだ。 「暫く見ん内に痩せたな!」
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