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「おかえり、ヒナ」
「……ただいま」
―――彼と私は奇跡のように出会い、再会した。
8月上旬、夏の始まり
再びこの地に訪れた私は、大きなボストンバッグを抱えたまま向日葵に囲まれていた。
私の目の前には、柔らかくて優しい彼の微笑がある。
「ひまわりが咲いたのは、これで4回目。……だから4年ぶりだね、ヒナ」
そう言った彼は、私の左手に触れる。だが、彼の温もりを感じることは出来ない。
呪縛のように私を締め付ける、左手の薬指にはめられた指輪が冷たい。
この冷たく小さい金属が、私の温もりとして馴染む日は来るのだろうか。
「……うん。ユウは全然変わらないね」
色素の薄い短い髪も、淡い緑の瞳も。柔らかい微笑でさえ、あの頃と全く変わらない。
今は、それ全てが残酷なのだけれど。
「俺の時間は進まないから。……ヒナは、すごく綺麗になってる」
昔は肩までだった髪も伸びて、今は胸下あたりのストレートだ。
私は、髪も瞳もユウと違って重たい黒。それを、彼は綺麗だと言う。
顔が熱い。
同時に、切ない。
彼の時間は止まったまま動かないけれど、私の時間はこうして動き続けているのだから。
私と彼の時間が交わることは、決して無い。
―――彼は、生きていないから。
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