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彼の名前はユウ。幽霊の幽から取って、ユウ。
名前を忘れた彼につけた、私だけが知っている彼の呼び名だ。
魂だけのユウは、全てを思い出した時に消滅してしまうらしい。
つまり、消える。
本人は思い出そうとするそぶりすら見せないけれど、いつどんな瞬間に記憶が戻るかは貞かではない。
また、彼が何年……もしかしたら何十年、幽霊として過ごしているのかも貞かではない。
彼が魂だけの形で存在出来るのは、ひまわりが咲く畑の中だけ。
だから彼は、気の遠くなるような時間を ひまわりの中で過ごしているのだ。
そして私、九城 日向(クジョウ ヒナタ)は そんな彼に恋をした。
自分の意思とは無関係の人生を歩むとばかり思っていた、高校三年生の夏。
彼に出会って、私の景色は黄色く色付いたけれど、これは許されない恋。
常識も科学も、全てを覆(くつがえ)した禁忌の領域なのだから。
「結婚、するの?」
ユウは、私の左手の薬指にはめられた指輪を触りながら尋ねる。
これは、婚約指輪。
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