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私は、この村の中で1番大きな屋敷で育った いわゆる“お嬢さま”。
今の両親には本当の家族のようによくしてもらったし、逆らうことなんて出来ない。
私なんかの政略結婚で家が護れるのなら、それは何の苦でもない。
逆に、親孝行が出来るなんて少し安心したぐらいだった。
……ユウに、出会うまでは。
「来年の夏に籍を入れるの。だから、ユウと会えるのは、多分……」
この夏が、最後
「……そっか」
私の言葉の続きを読み取ったユウは、これ以上 何も聞かない。
私も、あまり話したい訳じゃないけれど。
「大丈夫。会えなくなっても、俺はずっとヒナの傍に居るから」
素直に嬉しい言葉に思わず顔を上げると、あの優しい笑みが私を見ている。
その瞬間、思い直す。
「だめ」
「え?」
「他の男の人と一緒に居るところなんて、見られたくない」
私が、ずっとずっと隣に居て欲しいのはユウだけ。傍に居たいのはユウなのに……。
触れたいと思うのも、触れて欲しいと思うのもユウだけ。
それは、叶わないけれど。
ユウの頬にそっと触れた私の手は、そっと空を切った。
それが、私とユウは決して結ばれないのだと主張しているようで……残酷だ。
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